知的資本

コア技術の進化 水素燃焼技術

水素100%燃焼の家庭用給湯器を開発、2050年カーボンニュートラル社会実現に向け加速

燃焼した際にCO₂を排出しない水素100%を燃料とし、安全に安定した出湯が可能な家庭用給湯器を開発しました。同給湯器は、現行の家庭用給湯器と同等の最大能力24号※1と最小能力2.4号※2に対応し、施工性への配慮とあわせて、今までと変わらない快適性を実現しました。また、導入時のインフラを考慮し、従来ガスから水素への仕様変更も可能としています。

前方排気型家庭用給湯器

※1:給湯器の号数は「1分間に『一定の温度のお湯』を給湯できる量」を表しており、24号は水温+25℃の『一定温度のお湯』を、1分間に24リットルを出すことができます。なお、24号の給湯器は3〜5人世帯に適しており、基本的に家庭でお湯を使う箇所は、浴室、台所、洗面所の3箇所ですが、全ての設備でお湯を使っても不自由なく使用できます。
※2:比例燃焼時

水素の燃焼特性(従来ガスとの比較)

水素は、燃焼すると酸素と反応して水になる可燃性ガスです。
既存の燃料に比べて扱いが難しいため、現在は、主に工業用としてさまざまな用途で活用されています。燃焼してもCO2を排出しないことから次世代のエネルギーとして注目されています。

    

水素と都市ガスでは「燃焼する速さ」「火の着きやすさ、燃焼しやすさ」「炎の色」が大きく異なります。

■燃焼する速さ・・・水素は都市ガスと比較して最大燃焼速度が大きく、燃焼する速さが燃料を吹き出す速さよりも速くなると、燃料を炎が遡っていく「逆火」と呼ばれる現象が起きる可能性を持っています。
■火の着きやすさ、燃焼しやすさ・・・水素は点火エネルギーが小さく、火が着きやすいという特性があります。また、都市ガスではガスと空気を適量で混合し、着火装置で点火しないと燃焼しない事に対して、水素は燃焼する空気の混合範囲が広いため、燃えやすい特性を持っています。
■炎の色・・・都市ガスの炎は青白い色なのに対して、水素の炎は無色で見えないため、取り扱いに注意が必要です。

前方排気型家庭用給湯器

逆火への課題

バーナが大能力で燃焼している状態では、水素と空気の混合気の噴出速度が、水素の燃焼速度より速いため正常に燃焼します。
一方、小能力の燃焼時は、水素と空気の混合気の量が減少するため、噴出速度が遅くなります。この際に燃焼速度より遅くなると、逆火が発生することがあります。
万一、バーナ内部に火炎が遡ると危険な状態となるため、逆火をおこさないバーナを開発する必要がありました。

逆火とは

安全性を確保した水素バーナの開発

水素においても従来ガス同等の最小能力を実現、万一の逆火にも安全停止します。

水素バーナ(逆火対応)

水素バーナには金属繊維を採用し、繊維径や密度を調整して開口をきわめて細くする事で、水素混合気の噴出速度が水素の燃焼速度よりも大きくなるようにし、火炎がバーナ内部に戻らないように開発しました。

水素バーナ(逆火対応)

逆火を安全に停止する構造

フレームトラップという、一次バーナと二次バーナを設けて、万一逆火が発生したとしても、二次バーナ部で保炎し、その状態をセンサで検知して水素供給を停止することで安全に停止することが出来ます。

安全停止

可燃ガス領域の縮小

ファンの下流に水素を投入する構造とし、最小限の空間で水素と空気がしっかりと混合できるように通路設計を行うことで延焼リスクを低減しています。
この構造は欧州の基準にも対応しています。

可燃ガス領域の縮小

給湯最大号数24号

家庭用給湯器で最大能力の24号を実現しました。
可燃ガス領域の容積を維持しながら、水素と空気を均一に混合できる混合通路を開発しました。逆火耐性を維持しながらバーナ部の逆火性能も維持し、燃焼性能を向上できるように金属繊維バーナをチューニングすることで実現しました。

給湯最大号数24号

ガスインフラ変化への対応

現在は都市ガス(天然ガス)が主流ですが、今後、カーボンニュートラルへ向けて、都市ガスと水素の混合ガス、メタネーションによるカーボンニュートラルガス、水素ガスの導入が進められると想定されています。このようにガスインフラが変化していく中で、給湯器も都市ガスと水素の両方に対応できるようにしておく必要があります。
ガス流量を調整する部品とコントローラの設定を切り替える事だけで、従来ガスから水素へのガス種変更ができるように開発しました。

ガスインフラ変化への対応

設置性

国内と海外の標準設置形態に配慮し、国内向けは、給湯機の設置形態として最も多い屋外設置の標準排気仕様を、 採用しました。これにより現行給湯機との取り替えも容易にできます。 また海外向けは、屋内設置が主流であるため、排気筒接続の上方排気タイプについても開発を進めています。

設置性
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