付き合っていた当時から、仕事人間で無口だった夫。何かをプレゼントしてもらった記憶はほとんどなく、デートはいつも夫のアパートだった記憶しかない。
「結婚したら夫が変わった。」先に結婚した友人が嬉しそうに話すのを聞いて、結婚したら夫は変わるものと思い込んでいたが、休日はいつも家でゴロゴロしているだけの夫を見て、人は急には変わらないことを知った。

そんな私たちがなんとかやってこられたのは、結婚してすぐに娘が生まれたおかげだ。娘の成長や未来について一喜一憂したこの25年間は、あっという間だった。おかげさまで娘は明るく元気な子に育ち、半年前の朝、幸せそうに嫁いでいった。
娘が嫁いだ現在、夫にチョコレートを渡すのは私だけ。少しドキドキして渡した手作りのチョコレート・タルト。けれど夫は何の感動も見せず「冷蔵庫に冷やしといて」と言っただけ。腹が立ったけど、25年間も同じ人間と生活していれば、諦めることも生活の知恵になっていた。
2週間後、夫の書斎を掃除していると、いつもは鍵が閉まっている机の引き出しが開いていた。こっそり覗いた引き出しの中には、一通の手紙と小箱が入っていた。手紙 には、「ありがとう」の言葉と共に、私の名前が書かれてあった。25年前の3月14日、夫は「結婚しよう」と言ってくれたのだ。小箱の中身は、すぐにわかった。
小刻みに震える手で、そっと引き出しを閉めた。ホワイトデーに、私はきっと笑顔で泣いている。そんなことを考えながら、私は書斎のドアをゆっくりと閉めた。
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