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2007年12月12日更新
日常を演出するあかり vol.9


第9回目テーマ
「暮しにストーリーを作り出す光のデザイン」
「照明デザイナー」と聞いて、どんな仕事を思い浮かべるでしょうか。ランプやスタンドを作る職人? それとも映画や舞台の照明さん? ではなくて、空間や建築の照明計画を考える仕事のこと。『spangle』の村角さんは、美大の卒業製作で照明器具を製作したのをきっかけに、この世界の門をたたいたそう。「大学卒業時に就職先を聞かれて、照明デザイナーと答えると”プロダクトのデザインをするのね”ってよく言われました(笑)」と、15年前はほとんど誰も知らない職業だったとか。住まいの照明といっても、空調やスピーカーなどと同じ配線を組む仕事と思われがち。いまだに電気設備の業者さんが手掛けることの多い分野ですが、実際の設備を作るのではなく、住まいにあかりを配置する”光の設計図”を描くのが照明デザイナーです。
電気・ガス・水道と同じく、建物を造るときにあかりは欠かせない要素。近ごろは、メディアでも建築やインテリアといったテーマを扱うことが多くなり、住まいの照明デザインについても知られつつあるようです。ただ、見映えを気にする商業施設などはともかく、一般の住まいではそこまでは…と思う人も多いかも知れません。でも、特別な演出に使うだけが照明のデザインではありません。「あかりは生活のなかでいつも感じるもの。だからこそ、毎日の変化を楽しみ続けられるんです」という村角さんに、暮しに寄り添うあかりの取り入れ方をうかがってきました。


村角さんの照明計画 明るい部屋には影があります
誰もが「暗い部屋はイヤ」と思うかも知れませんが、すみずみまで光が入るのが”明るい部屋”というわけではありません。「例えば、スポットライトがあたった花瓶の花が「きれい!」と思えるためには、周りは暗く落ちてないといけない。ベースがあるいと輝いて見えない」。あかりが見えるのは、逆に陰があるからこそ。光が落ちた空間から、見せたいものだけを照らして景色を作っていくのが、村角さんの照明計画です。


最小限のところから考えるときにまず着目するのは、食事をするためのテーブル面への光など機能的なあかり。例えば昼間、自然光が入るけど奥が暗いと思った時には、補うのは蛍光灯が適しているそう。夜はそれも明るすぎるのでスタンドを使うなど、時間によっても最適なあかりは違う。村角さんはつねに、家で生活したり、時間を過ごすのに役立つあかりを提案しています。「住まいのなかであかりはあくまで脇役、機能を満たしたその先に、いい景色が生まれたら、より素敵ですね」と村角さん。暮しに共存できるあかりがあれば、特別なことをしなくても十分なんです。「何にもしてないように見せて実は考えてるというような、見た目にちょっとそっけないくらいがちょうどいいと思います」と、なるべく数少なく、効果的な計画をすることが村角さんの照明の美学です。 洗面のあかり


自然光が入る空間は、
一日の時間帯によって
表情が変わります。



あかりを楽しむ気持ち

リビングのあかり とはいえ、あかりで生活を演出するのも大事なこと。例えば忙しい時に、家に帰ってそのままの状態で寝るのではなく、ほんの30分だけでも自分の気持ちを落ち着かせて、休みに入っていける。そんなあかりの演出があれば幸せな気分になれるはずです。「もちろん機能が一番ですが、次に気持ちを演出することが大事。間取りを見た時に、この空間に一番大事な光は何か、どう過ごすのが望まれているのか見えてきます。それをぐっと引き出したい」。朝食はどこで食べたいか、ディナーは? 書斎は?と生活のシーンを想像するそうです。


そのポイントの一つが、一日を通して太陽の光がどう入ってくるかということ。「個人的には、朝日の入る寝室やダイニングは大好き! そこに窓があれば幸せかなと思うし、ちょっと暗くても、太陽と連動して照明を付けたり消したりして過ごすのは、すごく気持ちのいいこと」。日常ではなかなか感じられないかも知れませんが、あかりは当たり前にあるものではなく、住む人の生活リズムにも大きく関わっています。例えば、玄関のあかりも、調光機能付きのスイッチを付けるだけで、ずいぶん違ってくるそう。「家に帰って最初につけるあかりだから、真っ暗ななかからふわっと光が広がるのがよく見えるんです。調光にすれば雰囲気を変えたりもできるので、オン・オフだけではできない演出の余地を残してあげたいなと思いますね」。お客さんにとっても、入った瞬間に住まいのなかを期待させる演出にもなります。「デザイナーから、”こういう風に使って下さい”と導くことはできるけど、その後、どれだけ使いこなせるかは、住まい手の気持ちの次第」と村角さん。ちょっとの気づきがあれば、見なれた空間が豊かな表情を見せてくれます。住まいに取り入れやすいあかりのアイデアをいくつかご紹介します。 ダイニングのあかり

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“照度”と“明るさ感” 01|空間を包み込むあかり
「数値で測れる“照度”と目で見る“明るさ感”はまったく違うというのは、案外知られてないんです」と村角さん。照明をたくさん配置していても、暗く感じたり、わずかなあかりでも、明るく感じる空間もあります。その理由の一つは部屋の壁です。「周りの壁がきれいに照らされている空間は、すごく明るさ感を感じます。テーブル面の照度は低いけどあかりを受けた壁が反射板の役目になり周囲に拡散します。これが間接照明のあかりなんです」。周りからの光で照らすコツは、何もない白い面をいかに広くとれるか。「余白の美」が照明の効果を高めます。矛盾するようですが、実は部屋を明るく感じさせるには「壁」が必要なんですね。

02|外を感じるあかり
家が建物に囲まれているという場合でも、どこで外の景色を感じさせるかは大事なこと。壺庭や天窓はあかり取りの空間だけでなく、外が見えるという感じ方もあります。そこから空の色や自然光の変化が見えるのも、一種の照明の効果です。
照明の効果

庭を照らす 03|空間が広がるあかり
昼間は外が見える窓も、夜はガラスが反射して壁になってしまいます。そんな時は庭を照らすと、夜の景色が部屋のように続いて見える効果が。「部屋をしっとりした光にすると外の広がりを感じるし、ゆったり過ごせます」。間取りが狭い空間では、家の外を取り込むあかりは有効です。また、「光で一番大きな面を捕らえて、そこをラインでつなげて見せるのはすごく効果的」と、壁の面ををなるべくひと続きにしてあかりで照らすと、空間がつながって見えることで、面積は変わらないのに感じ方も変わってきます。



インテリアとあかりはセットで

あかりを変えるときには、何が照らされるのかを意識するのも大切。照明とインテリアは切っても切れない関係にあります。「照明だけでできることは限界があります。床や壁、天井など照らされるところもいっしょに変えないと効果は得られません」。ペンダントライト一つとっても、白い壁ならシルエットの出る黒いシェード、木目で色が締ってるなら対比を見せる白い照明など、世界観を生みだすことにつながります。インテリアとの組合せであかりを見せていく方法もあるんです。「見せ場を作るとよくいいますが、壁や雑貨などアクセントをつけることで、部屋のポテンシャルが上がります」。
照明器具もその一つ。「雰囲気の違う器具を使うといろんなあかりが組み合わせられるからいいですが、あくまで主役級の照明器具は1つか2つ。その方が場の意味が明確になります」。あかりを生かすコツは、見せたいものを絞ること。インテリアのアイデアで、光の相乗効果もより高まります。
壁紙のデザインを間接照明でより印象的に。 壁紙のデザイン
インテリアとあかり 白い壁面が大きいほど、明かりも広がりやすくなります。



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